犬の病気
2024.03.20
犬の慢性下痢(腸リンパ管拡張症)
犬の腸リンパ管拡張症とは
腸のリンパ管がなんらかの原因により閉塞もしくは破綻を起こし、小腸からのリンパ液が漏れ出ることで低蛋白・低アルブミン血症を引き起こす病気で、蛋白漏出性腸症の主な基礎疾患の一つです。
リンパ管拡張は、背景に腸炎やリンパ腫と呼ばれる腫瘍が隠れているケースも少なくありません。
犬種では、ヨークシャテリアやマルチーズ、短頭種で好発すると言われており、リンパ腫に関しては柴犬やパグで多いとされています。
犬の腸リンパ管拡張症の症状
下痢、嘔吐、体重減少、病気の程度にもよりますが腹水や胸水の貯留、むくみ、中には症状がなく、健康診断で発見されることもあります。
犬の腸リンパ管拡張症の診断
血液検査で、低タンパク、低アルブミン、低コレステロール、低カルシウム血症が認められることが多いです。超音波検査では、腹水が認められることが多いほか、腸の粘膜に特徴的な所見が認められることがあります。
確定診断を行うには、全身麻酔をかけ、消化器内視鏡で腸の粘膜を生検し、病理検査を行う必要があります。
犬の腸リンパ管拡張症の治療
治療は、食事療法がもっとも重要な治療方法となり、合わせて起こっている腸炎などの病気に対しての治療を同時に行っていくことになります。
食事療法としては、基本は低脂肪のご飯で脂肪を制限しつつ、消化されやすいバランスの取れたフードが推奨されます。
腸炎に対しては、ステロイドなどの免疫抑制剤を使用し、リンパ腫などの腫瘍の病気が起こっている場合は、抗がん剤を考慮する必要があります。
犬の腸リンパ管拡張症の症例
症例は、今年16歳になる高齢のトイプードルさん。数ヶ月前から泥のような下痢を繰り返し起こしていることを主訴に来院されました。
元々6.8kgあった体重は5.7kgまで減少していました。
血液検査を行うと、アルブミン、コレステロール、カルシウムの低下が認められました。
超音波検査検査では、写真(黄矢印)のように腸の粘膜に白い粒々の構造が認められ、これがリンパ管拡張症を疑う特徴的な所見です。赤矢印が正常な腸です。
消化器内視鏡検査を行うと、写真のようにリンパ管拡張所見(白い粒々の構造)が認められました。
病理検査の結果、この子は慢性十二指腸炎とリンパ管拡張症と診断されました。
治療では、食事に消化器サポートの低脂肪を選択してステロイド薬を始めたところ、下痢はしなくなり、1ヶ月で血液検査上の異常は認められなくなりました。
病気の程度にもよりますが、発見が遅れた場合、治療反応が悪くなったり、腫瘍の病気が隠れていると手遅れになることがあります。
下痢や嘔吐が続いたり、体重が軽くなってきた印象があれば、早めに診察を受けることをお勧めします。
なぐら動物病院 安部昌平
愛知県東郷町 名古屋市緑区天白区 日進市 豊明市 みよし市近郊