犬の病気
2024.04.27
犬の椎間板ヘルニア
犬の椎間板ヘルニアとは
犬において最も頻繁に遭遇する脊髄疾患であり、ハンセンⅠ型とハンセンⅡ型に大別されます。
ハンセンⅠ型は、椎間板の弾力性の低下によって変性した髄核(赤矢印)が脱出する急性発症を主とする病態です。ミニチュアダックスフンドに好発します。
ハンセンⅡ型は、非特異的な加齢性変化によって繊維輪(黄矢印)が背側へ突出する慢性進行性を主とする病態です。様々な犬種において発症します。
椎間板ヘルニアの発症割合は、首で約27%、腰で約73%と言われています。
犬の椎間板ヘルニアの症状
首の場合は、知覚過敏、筋肉の緊張、痛みで頭が上がらない、足に力が入らないなどがあげられます。腰の場合は、震え、活動の低下、痛みがあり腰を曲げる、後ろ足に力が入らない、もしくは動かないなどが挙げられます。
犬の椎間板ヘルニアの診断
触診や打腱器を使用する神経学検査で状態の把握をし、レントゲン検査を行います。しかしながら脊髄や椎間板の状態が単純レントゲン検査ではわからないため、外科手術が適応な重症の椎間板ヘルニアの場合、診断精度の高いCTやMRIを必要とすることが多いです。当院ではCT、MRI診断装置がないため、近隣の病院に検査を依頼しています。
犬の椎間板ヘルニアの治療
治療は外科的治療と内科的治療に大別されます。
外科的治療は、主に脊髄を圧迫する椎間板物質の除去および脊髄の減圧になります。これは、脊髄障害を呈する原因の根本的な解決を得ることができる治療法で、後肢麻痺が重度(痛覚消失)の際に選択されます。症状が軽度〜中等度の場合は、内科的治療から始め、症状の変化により、外科的治療を併用する場合もあります。
内科的治療は、基本は絶対安静をしつつ、椎間板ヘルニア周辺の炎症や疼痛を抑える治療となり、主に鎮痛剤(NSAIDs)や神経痛に対し抗痙攣剤(プレガバリン)を使用します。急性の脊髄疾患に対してはステロイド剤を使用することもあります。
写真は当院で行った外科手術時のものです。片側椎弓切除術にて脱出した椎間板を取り除き、術後はリハビリ治療を行うことで歩行の改善を促します。
脱出した椎間板(黒矢印)、椎間板に圧迫されている脊髄(黄矢印) 摘出後の脱出していた椎間板
犬の再生医療(幹細胞治療)
当院では、外科治療の他に再生医療である幹細胞治療も行っています。新たな細胞や組織を作り出す細胞である幹細胞を静脈内に点滴で投与することで、各臓器や炎症部位に移行し、炎症を抑制、脊髄を保護、損傷した脊髄の修復を行います。
麻酔を必要とすることがないので体の負担なく行うことができ、日帰りが可能です。内科治療や外科治療をしたが改善の乏しい子、年齢や基礎疾患があり手術の選択が難しい子に適している治療です。
治療選択は症例の状態によって検討をする必要がありますので、獣医師とよく相談をして決めましょう。
なぐら動物病院 獣医師 安部昌平
愛知県東郷町 名古屋市緑区天白区 日進市 豊明市 みよし市近郊