お知らせ・コラム

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犬の病気

2022.10.17

犬の腫瘍

犬の骨肉腫

骨肉腫は骨に発生する悪性がんの一種です。犬の骨原発腫瘍には骨肉腫、軟骨肉腫、多小葉性骨腫瘍などがあり、そのなかでも骨肉腫が最も多く80~90パーセントを占めます。骨肉腫の発生部位は四肢が75パーセントと最も多く、残りは頭部や背骨などに発生します。非常に転移率が高く、予後が悪いことが知られています。ゴールデンレトリバーやドーベルマン シェパードといった大型犬での発症が多いですが、小型犬でも発症します。発症部位としては上腕骨や大腿骨などの長骨に発生しやすく、肘から遠く膝に近い部位で好発するといわれています。発症年齢には2歳前後の若年齢と9歳以上の高年齢層の二峰性にピークがあると報告されています。

犬の骨肉腫の症状

犬の骨肉腫の症状は重度な痛みを伴う跛行です。時に周りの筋肉組織にも炎症が波及し、患部の腫れを認めることもあります。骨肉腫は腫瘍によって骨が破壊され、重度な炎症を伴うため骨折と同等かそれ以上の痛みを伴うといわれています。骨肉腫は腫瘍としての治療と同時に、この痛みにどう対応するかがキーポイントとなります。

犬の骨肉腫の診断

犬の骨肉腫の診断は、痛みや腫れがある部位のレントゲン撮影がファーストチョイスになります。レントゲン検査にて骨の表面が不整に盛り上がるサンバーストサインや骨の中心が黒く虫食い状に抜けるパンチアウトサインなどが認められると骨肉腫を強く疑います。エコー検査においても、不整な骨の表面を観察することができます。これらの所見が認められた場合、リンパ節や肺などへ転移所見がないか、頭部や背骨などにも怪しい所見がないか確認することが今後の治療の選択に影響します。

レントゲンなどで上記のような所見が認められた場合、針による細胞診断や骨髄針による組織生検を実施し病理検査にて骨肉腫の診断を行います。

レントゲン画像

超音波画像(骨の表面が粗造です)

 

犬の骨肉腫の治療

犬の骨肉腫の治療は診断された時の年齢や状態によって様々な選択肢を考える必要があります。年齢やすでに転移の所見があるか、どれくらいの予後が見込めるのかなどが治療の選択に影響します。犬の骨肉腫の治療はただ腫瘍を取り除く、延命をするということだけが目的ではなく、痛みに対する対応をどうするかをご家族の方とよく相談をする必要があります。もし予後が短いと予測された場合でも、残りの余命の期間の痛みを取り除くために積極的な外科手術を選択する事もあります。

犬の骨肉腫の治療のベースは、四肢の骨肉腫に関しては断脚手術による腫瘍の摘出です。上記のように予後が短いことがあり、それなのに足を取ってしまうのはかわいそうではないかと仰るご家族の方もおられます。そのお考えも間違いではないと思いますが、患部は骨折と同等かそれ以上の痛みがあるといわれています。残りの余生を痛みとともに過ごしていくのはとてもつらく、食欲の低下など生活の質も低下します。時に患部が骨折してしまうこともあります。断脚手術に関してはご家族でよく話し合い、検討する必要があるでしょう。断脚手術を避けたい場合の痛みの緩和や四肢以外に発生した骨肉腫に対しては、放射線治療が適応になるケースもあります。

また、外科手術によって原発巣を治療した場合でも、遠隔部位での転移の進行が問題となります。全身に点在する微小な転移巣の成長を抑制するには、断脚手術後に抗がん剤治療を行うことが一般的です。四肢に発生した骨肉腫に対して、断脚手術のみで治療した場合の余命は平均して3~4ヶ月であるのに対し、手術後抗がん剤治療を実施した場合には10~12か月に延長します。骨肉腫に対する抗がん剤治療は、3~4週間に1回、計4~6回行い、通院での治療が可能です。

 

左前足に骨肉腫が発生し、断脚手術後、抗がん剤治療を頑張っているゴンベエくん。

 

なぐら動物病院 獣医師 名倉義治