犬の病気
2023.01.09
犬の胆嚢疾患(胆泥症、胆嚢粘液嚢腫)
犬によくみられる胆嚢疾患
胆嚢疾患は初期は無症状であることが多く、健康診断等の血液検査や超音波検査で発見されることが多い疾患です。
肝臓で作られた胆汁は胆嚢に貯留され、食事をすると胆管から十二指腸に排泄され脂肪の消化を促します。通常、胆汁は液体ですので、スムーズに胆管から十二指腸に排泄されますが、胆汁が何らかの要因で砂状(胆泥症)やゼリー状(胆嚢粘液嚢腫)変性すると胆管から排泄しにくくなり、詰まった状態になってしまいます。胆泥症の状態の時は、血液検査上で正常もしくは軽度の異常値を示すのみで、通常は症状も全く見られません。粘液嚢腫や胆石、軽度の胆嚢炎などの場合では、血液検査でALPやALTの高値が認められるものの、慢性的な状態の子の場合は症状があまりないこともあり、症状が現れた時には重症化しているケースが多いです。
犬の胆嚢疾患の症状
症状は、急な食欲不振や嘔吐、下痢、腹痛などで、胆嚢破裂や膵炎を併発しているような場合には黄疸や意識レベルの低下がみられ、最悪の場合、虚脱状態に陥り、命の危険を伴います。
犬の胆嚢疾患の原因
胆汁が変性してしまう原因としては、肥満や高脂血症、高脂肪食の摂取などがあげられ、副腎機能亢進症、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が関与している場合もあります。また好発犬種として、ミニチュアシュナウザーやシェルティなどが挙げられています。
犬の胆嚢疾患の検査や治療
胆嚢疾患の治療は、軽度の場合は内科的に投薬治療や食事改善などで経過を観察していきます。
定期的に血液検査や超音波検査を行い、進行している様子が伺える場合は、外科的に胆嚢切除を行うべきかを検討します。
超音波画像
激しい嘔吐や腹痛、黄疸などが見られ、重度の胆管閉塞、胆管炎、また胆嚢破裂を起こしてしまっている場合は、早急に胆嚢摘出手術を行う必要があります。
すでに胆汁が腹腔内に漏れ、腹膜炎を起こしてショック状態に陥っている場合や膵炎などを併発している場合は、手術のリスクが非常に高くなります。
そのため、無症状なうちに摘出手術することも推奨されていますが、内科的な治療で長期に維持できることも多いため、高齢な子の場合は手術がベストな選択なのか、非常に悩まれる問題となります。
写真は胆嚢破裂を起こして、緊急手術を行った子の胆嚢の様子です。
胆嚢が破けて内容物が腹腔内に飛び出ている様子(緑矢印) 胆嚢(白矢印)
摘出した胆嚢(胆嚢壁が一部破け、ゼリー状の胆汁が詰まっています)
写真の子は16歳の高齢犬でしたが、手術は無事に終わり、胆管閉塞も解除され順調に回復してくれました。
胆嚢疾患は重度になるまで症状を現さないことが多いため、定期的に血液検査や超音波検査を行い、早期に発見し、状態を把握しておくことが大切です。
愛知郡東郷町なぐら動物病院 獣医師 名倉美智子