小動物の病気
2023.05.07
うさぎの神経疾患(斜頸)
うさぎの斜頸
うさぎの斜頸はしばしばみられる疾患の一つです。平衡感覚を司る内耳の中の前庭や中耳に炎症が起こると、斜頸や眼振、ローリングを起こします。この斜頸やローリングなどの症状は、突然起こることが多く、朝は普通だったのに夕方には傾いていたなど、突然の症状なため、うさぎ本人もびっくりしてパニック状態になっていることもあります。中にはローリングを起こしていても、食欲は保てている子もみられ、その場合は比較的治療がしやすいです。
うさぎの斜頸の原因
斜頸を起こす原因としては、外耳や中耳や内耳に細菌感染を起こしている耳が原因の場合や臼歯の歯根膿瘍による細菌感染によるもの場合、寄生虫のエンセファリトゾーン感染症による肉芽腫性髄膜脳脊髄炎が原因の場合、また腫瘍の発生により発症している場合などがあります。
うさぎの斜頸の診断
診断はレントゲン検査、血液検査、エンセファリトゾーンの抗体価(グレーゾーンの場合は2回検査が必要(ペア血清))、CTなどを組み合わせて診断します。ただし、うさぎが1kg未満の小さい個体の場合は、何回も採血ができない可能性もありますので、治療的診断となる場合もあります。
うさぎの斜頸の治療
治療は原因によっても異なりますが、細菌感染の場合は、抗生剤の投与、食欲不振や飲水量の低下などが見られる場合は皮下点滴や消化器系の薬剤、エンセファリトゾーンに対しては駆虫薬(当院では海外薬のフェンベンダゾールを導入)の投与、炎症緩和のためのステロイドや鎮痛薬などを組み合わせて治療を行います。軽症の場合、眼振や斜頸は1~2週間で収まる場合が多いです。しかし、重度のローリングを起こしているうさぎの場合は、斜頸が残ってしまうこともあります。また、原因がエンセファリトゾーン症や腫瘍の場合は、症状が緩和されても再発することも多く、膿瘍の場合は外科的な治療を行っても完治はとても難しいです。少しでも痛みや体調不良を抑え、気分良く生活ができるように、負担の少ない検査や治療を行えれば良いかと思います。
愛知県東郷町 なぐら動物病院 名倉美智子