お知らせ・コラム

お知らせ・コラム

犬の病気

2023.07.14

膝蓋骨脱臼(パテラ)

膝蓋骨脱臼(パテラ)とは

膝蓋骨脱臼(パテラ)は、膝のお皿が溝(大腿骨滑車)から外れ、内側もしくは外側に脱臼した状態のことをいいます。この病気の多くは小型犬に認められますが、大型犬や猫でもしばしば見られることがあり、その多くは内側に脱臼する内方脱臼です。

膝蓋骨脱臼の原因

発症してしまう原因としては、先天的に大腿骨滑車溝が浅く生まれつき外れやすい場合が多く、特にトイプードル、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャテリア、柴犬などの犬種で多く見られ、ゴールデンレトリバーなどの大型犬でもまれに認められます。また後天的に事故などの外傷により発症してしまうこともあります。

膝蓋骨脱臼の症状

先天性の場合、比較的、無症状な場合が多く、軽度(グレード1~2程度)の場合、脱臼しても痛みがなく歩行もできることも多いため、動物病院での診察の際に気が付くことが多いです。事故や成長と伴に悪化して急に脱臼した時は「キャイン」と鳴いて痛みを呈したり、びっこを引いて足が着けなくなったりします。

また、常に脱臼しているような重度の場合は、足が変形しO脚やX脚となり、足が挙上したままの状態で歩行ができなくなってしまいます。

膝蓋骨脱臼の治療

軽度の場合は無治療や内科的な治療のみで様子を見ることが多いですが、脱臼すると痛みがある場合や、脱臼したままの状態で歩行困難な場合は外科的に手術を行います。また、前十字靭帯断裂を起こしてしまい歩行困難となってしまった際に、前十字靭帯断裂の手術と一緒に手術する場合もあります。

膝蓋骨脱臼の手術

大腿骨滑車溝にあるお皿は、靭帯で下腿骨のスネの部分に付着し、上部は大腿四頭筋という太腿の筋肉に付着しており、足の屈伸運動に重要な働きをしています。そのため、成長期にお皿が脱臼したままの状態の重度(グレード4)の膝蓋骨脱臼を呈している場合、成長に伴い靭帯の付着部の位置が変異し、骨も変形し、大腿四頭筋の位置なども変異してしまいます。外科的に整復をする場合、それらを考慮し、いくつかの方法を組み合わせて行います。

主に行う手術方法としては、

滑車溝造溝術(お皿が乗っている溝を深くする)

脛骨粗面転移術(変異してしまった靭帯付着部を元の位置で固定する)

内側もしくは外側靭帯解放術(引っ張られている靭帯を開放する)

関節包縫縮術(伸びてしまった関節包を縮める)

大腿四頭筋剥離(筋肉の位置の調整をする)

などを組み合わせて行います。

 

オレンジ矢印:脱臼してパテラが正常な位置にない 青矢印:正常な位置のパテラ

 

オレンジ矢印:パテラ外方脱臼 青丸:本来パテラがあるべき場所

高齢になってから前十字靭帯断裂も併発し歩けなくなってしまい、両足を手術しました。現在は元気に歩いています。

 

手術後のレントゲン

痛みがなく、歩行が可能な場合は、無理に手術する必要はないと思いますが、高齢になってから関節炎や歩行困難になる可能性はありますので、膝蓋骨脱臼の程度が重度の子は、よく獣医師と相談されると良いでしょう。

 

愛知県東郷町 なぐら動物病院 名倉美智子