お知らせ・コラム

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猫の病気

2024.02.06

猫の肥満細胞腫

猫の皮膚型肥満細胞腫

猫の皮膚の腫瘍でたびたび見受けられる腫瘍に肥満細胞腫があります。

肥満細胞はアレルギーに関与している細胞で、アレルギー物質にさらされて反応するとヒスタミンを分泌します。この肥満細胞は皮膚や脾臓、肝臓、肺など全身に存在し、その細胞が腫瘍化したものが肥満細胞腫です。

肥満細胞腫は、皮膚型と内臓(脾臓・臓器型、消化管型)に分類され、猫の皮膚型肥満細胞腫の場合は、早期に発見、治療を行うことができれば良性の経過をたどることが多い腫瘍です。

消化器型の場合、嘔吐や食欲不振などの症状が出てから見つかった場合には、すでに多臓器に広範囲に転移している場合が多く、残念ながら悪性の経過をたどる場合が多いです。脾臓のみ腫瘍発生の場合、脾臓摘出手術で良好な経過をたどることもあります。

肥満細胞腫の診断

診断は主に細胞を針で生検し、細胞診で診断します。特徴的な細胞が採取されますので、院内で診断がつきますが、切除後に腫瘍の進行度や完全に切除しきれているか(辺縁の腫瘍細胞の散らばり)などの診断のため病理検査は必須となります。また、犬と同様にc-KIT遺伝子変異が報告されており、c-KIT遺伝子変異検査が分子標的薬の効果判定の指標となります。

肥満細胞腫の治療

治療は、基本的に外科的に切除が基本となります。腫瘍の周辺に腫瘍細胞が散らばりやすい腫瘍なため、マージンを広く取って切除する必要があります。

切除不可能または切除しきれない状態の場合、また転移の抑制のため、化学療法や放射線療法なども行います。

化学療法はCCNU、ビンブラスチン、分子標的薬(トラセニブ・イマチニブ)、クロラムブシルなど、その子の状態などを考慮しながら行っていきます。

皮膚型肥満細胞腫の症例

目の際に発生してしまった肥満細胞腫(前からあった腫瘍が1週間くらいで急激に大きくなてきたとのこと)

 

抜糸時の様子:腫瘍の散らばりを考慮し、マージンを確保しつつ完全に摘出ができました。顔貌も左右差なく綺麗な状態に切除でき、毛が生えれば全く分からないでしょう。

指に発生した肥満細胞腫

抜糸時:完全切除ができ、皮膚も綺麗にくっ付いています。

 

顔や手足にできた場合、皮膚を大きく切り取ることが難しいですので、小さな腫瘍であっても、できるだけ早く細胞診を行い、大きくなる前に切除することをお勧めします。

腫瘍は放置しないようにしましょう。

 

 

なぐら動物病院 名倉美智子

愛知県東郷町 名古屋市緑区天白区 日進市 豊明市 みよし市近郊